きなこちゃんバリへ行く

旅と冒険が大好きなきなこちゃんが、バリ島へ行くおはなし。現実と虚構、あらゆる世界へ!

はじめてのバリ

「そんなに沖縄が好きだったら、バリに行ってみなよ」

「沖縄が好きな人は、きっとバリにもハマると思うよ」

 

バリ?

バリ島?

 

名前を聞くまで、きなこちゃんはその島のことをほとんど知りませんでした。

なにせ、外国というものに行ったこともなかったのですから。

むしろ憧れはヨーロッパ。

パリになら行きたいと思っていたくらい。

 

さて、音楽家の友達は、バリのKuta(クタ)という海岸の近くで体験できるかなりディープな情報を教えてくれました。

いつも髪を切ってくれる美容師さんは、写真集を貸してくれましたっけ。

ほかの人からも、ほかのことも、次々と。

こんなにも勧められるんだから、きっと何かあるはず。

下調べもほとんどしないままバリ島に降り立ったのは、1993年のことでした。

 

夜。

空港に漂う甘い匂い、くらいくらい道のことは、前にも書いた通り。

タクシーに乗り、友達から聞いていたクタへ。

バリいちばんの観光地で、サーフィンをしにくる人がほとんど。外国人向けのレストランやバーもある。

そのどれにも興味はないけれど、ここに泊まることにしたのは、空港から近かったのと、観光客が多いぶん自力で予約できそうな安宿も多かったからです。

地球の歩き方』を見て予約した宿を目指して、灯りのない路地をひたすら進む。看板は見つかったものの、やっぱりまっくら。

奥へ進むとくらがりのなかに従業員がいたけれど、一生懸命英語で書いてFAXで送った予約はまったく通っていなかった。

「プールが改装中だから安くしますよ」って、返信来てたんだけどなぁ。

幸い部屋が空いていたので無事に泊まることができましたが、

今から思えば、こんなことはバリではよくあるできごとの一つでした。

 

泳げないから海にも入らず、海岸をぶらぶらして、ひたすら町を歩いて、安い食堂でインドネシアご飯とビンタンビールをかっくらう日々。

冒険し過ぎてちょっと大変な目にもあったけれど、そのおかげで、小手先の何かの力を頼るのではなく、自分そのままで、この島にもっと触れたいと、きなこちゃんは思ったのでした。

 

4日目の朝、Ubud(ウブド)という山のなかの村へ移動。

こちらの宿はもう少し上等で、ちゃんと予約が通っていました。

よかったね、きなこちゃん。

いや、当たり前でしょ。

2階建てで、半露天の場所にトイレとシャワーがあるコテージ。

部屋の壁に神様の像がたくさん飾ってあって、夜になるとちょっと怖かった。

昼間は、テラスのふちに座って煙草を吸いながら、うるさいくらいの緑を眺めていた。

 

このウブド村は踊りや音楽が盛んで、「芸術村」と呼ばれているところ。

観光客向けの公演も毎日のように行われていて、きなこちゃんも王宮の広場へ踊りを見にいきました。

初めて見たバリの踊り。

この踊りに一目惚れして、自分もやろうと決意した!

なんて、お約束のようなことはまったくなくて。

もちろん素敵だと思ったけれど、この踊りを自分がやるなんて夢にも考えませんでした。

あれ? 隣の黒蜜くんの様子がおかしいけど。

まぁ、いいや。

 

3日間滞在して、帰国の日。

きなこちゃんは、慣れない英語で宿の従業員と話をしました。

「この場所が好きで何回も来ている日本人の友達が何人もいる、みんなインドネシア語を勉強して手紙を書いて送ってくれたりしているんだよ」

ああ、自分も言葉を覚えて、この島の人たちともっと話してみたい。

踊りよりも、こっちの気持ちのほうが、きなこちゃんの中で沸々としてきていました。

 

初めての外国、初めてのバリ。

いろいろなことがあって、いろいろなものを見過ぎて。

体も心も容量が足りないよ。

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